最大の原因はストレス! 自律神経失調症
目次
- 自律神経失調症について
(1)自律神経失調症とは
(2)自律神経失調症の主な原因
(3)自律神経失調症の4つのタイプ
(4)自律神経失調症の主な症状 - 自律神経失調症の診断と治療
(1)何科にいけばよいのか
(2)自律神経失調症の検査・診断
(3)自律神経失調症の治療 - 自律神経失調症のセルフチェック
- 自律神経失調症のセルフケア
- コロナ禍におけるストレスと自律神経失調症
- 自律神経失調症に対するカウンセリング
自律神経失調症について
(1)自律神経失調症とは
全身に網の目のように張り巡らされている末梢神経は、その働きから大きく2つに分けられます。1つが、自分の意思で動かすことのできる「体性神経」。手で物を取る、歩く、話すといったすべての行動は体性神経によるものです。もう1つが、自分の意思とは関係なく24時間働き続けている「自律神経」です。呼吸器や消化器、循環器といった内臓、血管、リンパ管などの機能が絶えず動いているのは自律神経によるものです。
自律神経は、さらに「交感神経」と「副交感神経」に分かれます。交感神経は体が活動する昼間に活発になる神経で、副交感神経は休息や睡眠をとる夜に優位になる神経です。反対の働きをするこれらの神経が絶妙なバランスを保つことで、私たちの生命は維持されているのです。
ところが、なんらかの原因によって交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうと身体や精神にさまざまな不調が現れます。これが「自律神経失調症」です。
(2)自律神経失調症の主な原因
自律神経の乱れから生じる自律神経失調症は、さまざまな原因が複雑にからみあって起こるといわれていますが、最大の原因はストレスです。仕事のプレッシャーや人間関係などからくる精神的ストレス、過労などによる身体的ストレス、災害や環境の変化といった過剰なストレスが、自律神経のバランスが崩れる原因となります。下痢をしやすい、自分の家以外では眠れないといった生まれつき自律神経が過敏な人、他人の評価が気になる、気持ちの切り替えができないといったストレスに弱い性格の人は、特に自律神経失調症に陥りやすいといえます。
その他、不規則な生活習慣、偏った食事、夜更かしなどによる生活リズムの乱れなども自律神経の乱れにつながります。思春期や更年期障害など、ホルモンのバランスの変化が影響することもあります。
(3)自律神経失調症の4つのタイプ
【本態性自律神経失調症】
もともと自律神経のバランスが崩れやすいタイプ。生まれ持った体質そのものに原因があります。生まれつき虚弱体質や低血圧の人、家族に自律神経失調症の人がいる人に多いと言われています。
【神経症型自律神経失調症】
心理的な要因によって自律神経が崩れるタイプ。神経質で、周りを気にし過ぎる、自分を追い詰めてしまう、他人への依存度が高いといった人に多く見られます。精神状態に影響されやすく、不調が身体症状として現れます。
【心身症型自律神経失調症】
日常生活のストレスが原因で自律神経が崩れるタイプ。自律神経失調症の中でもっとも多いタイプで、まじめで完璧主義、不満も口に出さずに一人で抱え込んでしまうような性格の人がなりやすいとされています。
【抑うつ型自律神経失調症】
頭痛やだるさといった身体症状に加え、やる気がでない、気分が落ち込むといったうつ症状がみられるのがこのタイプです。原因は慢性的なストレスの蓄積。悪化するとうつ病に繋がることがあるため、注意が必要です。
(4)自律神経失調症の主な症状
自律神経失調症の症状は個人差が大きく、現れる箇所も度合いもさまざま。大きく分けて身体的な症状と精神的な症状があり、それらが複数同時に現れることもあります。
<身体的な症状>
疲労感、だるさ、めまい、のぼせ、ほてり、冷え、頭痛、耳鳴り、動悸、不眠、便秘、下痢、手足のしびれ、関節の痛み、肩こり、微熱、高血圧、低血圧、多汗、口の渇き、食欲低下 など
<精神的な症状>
イライラ、不安感、気分の落ち込み、憂うつ感、集中力の低下、パニック など
1.自律神経失調症の診断と治療
(1)何科にいけばよいのか
実は、自律神経失調症という正式病名は、医学的にはありません。自律神経系の症状はあるけれど原因がわからない、検査をしても異常がみられないという状態に対し、便宜的に自律神経失調症との診断名をつけて、治療に結びつける場合があります。
ただし、自律神経失調症で現れる症状は、他の病気の症状としても起こりうるものばかりです。ですから、まずは一番気になる症状にあった診療科を受診しましょう。症状の裏に自律神経失調症以外の病気が潜んでいないか、見逃さないことが重要です。
(2)自律神経失調症の検査・診断
自律神経失調症を数値として検査・診断できるツールはいまのところありません。
まずは、自律神経症状の原因となる身体疾患があるかどうかを診断します。特に甲状腺の機能異常や糖尿病では、自律神経失調症と同様の症状が現れがちです。まれにパーキンソン病やレビー小体型認知症など身体疾患に伴う自律神経症状もあるため、鑑別診断が重要になります。
さらに、抑うつ気分、意欲の低下、不安感などの精神症状があるかどうかを注意深く診察して鑑別します。うつ病や不安障害などの症状として自律神経症状が現れる場合もあるためです。
(3)自律神経失調症の治療
自律神経失調症は症状やタイプにより、身体と心の両面に働きかける治療が必要です。そのため、消化器科や循環器科といった身体症状に対応する身体科の医師と、精神症状に対応する精神科・心療内科の医師が協力して治療にあたることが望ましいと考えられています。
【薬物療法】
対処療法として、自律神経調整剤や抗不安剤、睡眠剤、ホルモン剤などが症状に合わせて用いられます。背景にうつ病や不安障害がある場合は、SSRIなどの抗うつ薬を使用することもあります。
若い人から高齢の方まで、幅広い年齢に適用できることから漢方薬も多く使用されます。代表的なものに、胸の違和感や下痢の改善に用いる黄連、イライラや不眠の改善に用いる抑肝散、神経の緊張の緩和や興奮の抑制に用いる芍薬があります。
【身体面からの治療法】
肩こりや関節の痛み、手足のしびれといった身体症状には、鍼灸、指圧、整体、マッサージといった理学療法を用いて緩和することがあります。ただし、自己判断はせず、医師の指導の元に理学療法を取り入れましょう。
【精神面からの治療法】
ストレスに直面したときの自身の考え方のクセを矯正する認知行動療法、ストレスをセルフコントロールする術を身につける自律訓練法のほか、人に話すことで自身の内面を見つめ直し、解決策を探るカウンセリングなどがあります。
2.自律神経失調症のセルフチェック
該当する項目がいくつあるか、チェックしてみましょう。
□めまいや耳鳴りのするときが多い。または立ちくらみをよく起こす。
□胸が締め付けられる感じがする。
□または胸がザワザワする感じが時々ある。
□心臓がいきなり早くなったり、脈拍が飛ぶようなことがある。
□息苦しくなるときがある。
□夏でも手足か冷えるときがある。
□胃の調子が悪いときが多い。(お腹がすかない・胸やけなど)
□よく下痢や便秘をする。または便秘と下痢を繰り返す。
□肩こりや腰痛がなかなか治らない。
□手足がダルイ時が多い。
□顔だけ汗をかく。または手足だけ汗をかく。
□朝、起きる時に疲労を感じる。
□気候の変化に弱い。
□やけにまぶしく感じる時がある。
□寝ても寝ても寝たりない。
□怖い夢をよく見る、または金縛りにあう
□風邪でもないのに咳がよく出る。
□食べ物を飲み込みつらい時かある、喉に違和感がある。呂律が回らない時がある。0-1個 自律神経に狂いはなさそうです。
2-3個 自律神経に負担が掛かっているかもしれません。
4-6個 自律神経失調症になりかけているかもしれません。
7個以上 すぐに休養を取り、できるだけ早く専門家に相談しましょう。
3.自律神経失調症のセルフケア
自律神経失調症のセルフケア
自律神経失調症には、生活スタイルの乱れが強く影響します。まずは自身の生活スタイルを見直し、食生活や睡眠、生活リズムなどを改善することが重要です。ただし、無理をせず、できる範囲で少しずつ改善していきます。改善しなければと気負い過ぎると、それが逆にストレスとなってしまうことがあるからです。
<食生活>
できるだけ決まった時間に食事をするようにしましょう。決まった時間の食事をとることで、体内時計が正常になり、生活のリズムが整います。また、3食とることも重要です。特に朝食は、身体を目覚めさせ、副交感神経優位から交感神経が優位な活動体勢への切り替えになります。
栄養バランスも大切です。穀類、肉・魚などの主菜、野菜などを使った副菜をそれぞれバランスよくとることが基本です。その上で、自律神経によい栄養素を積極的にとるようにします。ビタミンB1には神経の働きを正常に保つ働きがあり、不足すると精神的な能力の低下、イライラ、不眠の原因となることがわかっています。ビタミンCはストレス対策に有効、カルシウムはイライラを鎮め、不眠を改善します。
これらの栄養素を食事に取り入れることがどうしても困難な場合は、サプリメントなどを活用してもよいでしょう。ただし、過剰摂取は注意。用法等については医師に相談しましょう。
<睡眠>
自律神経のバランスに深く関係している体内時計を正常に働かせるために重要なのが、睡眠です。朝を起きて太陽の光をあびることで、体内時計はリセットされ、1日がスタートします。夜は入浴などでリラックスすることで副交感神経が優位になり、質の良い睡眠をとることができます。ただし、就寝前の過度な飲酒やカフェインの過剰摂取などの習慣のある人は改善を。早寝早起きを心がけ、規則正しい生活リズムを取り戻しましょう。
<休職・退職>
自律神経失調症の最大の原因はストレスです。よって、改善にはストレスの原因を遠ざける、あるいは丸ごと取り除く必要があります。
もし、ストレスの原因が仕事のプレッシャーだったり、職場の人間関係だったりし、会社に改善を要請してもよくならない場合は、休職や退職という選択肢もあります。一時的にストレス要因から離れて治療に専念するのです。医師やカウンセラーなどに相談しながら、慎重に判断しましょう。
4.コロナ禍におけるストレスと自律神経失調症
自律神経失調症のセルフケア
未曾有の事態であるコロナ禍では、あらゆることがストレスとなります。例えば、通勤を続けている人であれば感染するかもしれないというストレス、リモートワークの人であれば自宅にこもりがちになることへのストレス、気軽に旅行などにも行けないストレス、子供が楽しみにしていた学校行事などが中止を余儀なくされているストレスなど、あげればきりがありません。自分の意思とは関係なく生活や行動を制限されている、いつまで続くか分からないこの生活に振り回されているということが、大きなストレスとなっているのです。
コロナ不安、コロナうつ、コロナ疲れといったメンタル不調を感じている人が増えているいま、自律神経失調症にも注意が必要です。過度のストレスに常にさらされているコロナ禍は、自律神経失調症にいつ誰がなってもおかしくない状況といえます。
すでにさまざまな症状が現れている方は、まずはクリニックを受診して医師の診断を仰ぎましょう。コロナ禍で外出を避けている、クリニックまで公共交通機関を使用することが怖いという方は、オンライン診療を行っているクリニックや、リモートカウンセリングを行っている専門機関もあるので、そられを利用するのもよいでしょう。
自律神経失調症に対するカウンセリング
ストレスが最大の原因とされる自律神経失調症の治療に、カウンセリングは有効です。話を聞いてストレスの原因を追究したり、自身の生活スタイルを見直したりすることが、自律神経失調症の治療に役立ちます。
また、自律神経失調症の症状は人によってさまざま。複数の症状が同時に現れる場合もあるため、自分が受診する科はここで合っているのか迷ったり、いきなり精神科や診療内科を受診することに抵抗があったりと、クリニックを訪れることに高いハードルを感じる人もいるのではないでしょうか。そんな方にもカウンセリングはおすすめです。
カウンセリングには、対面カウンセリングとオンラインカウンセリングがあります。カウンセラーと直接対面して行う対面カウンセリングは、集中できる環境でカウンセリングを受けたい方に、オンラインカウンセリングは、ご自宅などリラックスできる環境でカウンセリングを受けたい、遠方で通うことが困難という方に適しています。
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